株式会社第一計器製作所

技術資料

1.圧力について

1-1 圧力の測定方法と圧力計の分類

圧力計は測定方法により主に以下の3つに大別される。

現在、工業用圧力計としてはほとんどが弾性圧力計を使用しているが、近年は圧力を電気信号に変換して表示・出力する電子式の圧力計も増加している。

主な圧力計の種類(構造別)

また、測定圧力の種類によって以下の3種類に分類される。

更に、ゲージ圧力計は圧力範囲によって以下の3種類に分類される。

その他、機能・用途・形状・精度などの面から分類される場合もある。

一方、液柱型圧力計、重錘型圧力計は工業用圧力計としてではなく、圧力発生器・標準器・基準器として使用される。

1-2 圧力単位

平成5年11月の新計量法施行において平成11年10月1日より圧力単位として国際単位系(SI)のPa(パスカル)を使用することが定められた。

圧力単位Paの定義
Pa=N/m²(ニュートン毎平方メートル)

SI単位系ではないが以下の単位が国内で使用可能
bar(バール)

SI単位系ではないが用途を限って以下の単位が国内で使用可能
生体内圧力測定:Torr
血圧の測定  :mmHg
航空機やその他の航空:psi(lbf/in²)

圧力単位間の換算表
MPa Kgf/cm² psi bar mmHg、Torr mmH₂O atm
1 10.197 145.0 10 7501 101970 9.869
0.101 1.0333 14.7 1.013 760 10333 1
0.1 1.0197 14.5 1 750.06 10197 0.987
0.098 1 14.223 0.981 735.56 10000 0.968
0.007 0.070 1 0.069 51.71 703.1 0.068
0.133×10-3 1.359×10-3 19.34×10-3 1.333×10-3 1 13595×10-3 1.316×10-3
0.009×10-3 0.1×10-3 1.422×10-3 0.098×10-3 73.56×10-3 1 0.097×10-3

2.圧力計について

2-1 圧力計でよく使われる用語

用語 解説
ゲージ圧 周囲の圧力を基準(ゼロ)とし、基準より高い圧力を正のゲージ圧、低い圧力を負のゲージ圧と呼ぶ。
絶対圧 絶対真空(絶対ゼロ圧)を基準にした圧力。
絶対圧=周囲の圧力(大気圧)+ゲージ圧
単位記号の後ろにabsと記すことが多い。 例)**MPa abs
ゲージ圧と絶対圧の関係
圧力計 正のゲージ圧を測定する圧力計。
真空計 負のゲージ圧を測定する圧力計。
連成計 正及び負のゲージ圧を測定する圧力計。
目盛は正のゲージ圧を示す圧力部と負のゲージ圧を示す圧力部とからなる。
最大圧力 圧力計、連成計の圧力部:目盛数字の最大値に対する圧力値。
真空計、連成計の真空部:目盛数字の絶対値の最大値に対応する圧力値。
最小圧力 圧力計、連成計の圧力部:目盛数字の最小値に対する圧力値。
真空計、連成計の真空部:目盛数字の絶対値の最小値に対応する圧力値。
通常はゲージ圧力=0を最小圧力とする。
用語 解説
圧力スパン 目盛スパンに対応する圧力値。 最大圧力と最小圧力の差。
連成計:圧力部の最大圧力の絶対値と真空部の最大圧力の絶対値との合計。
定圧力 変化しない圧力、または1秒当たり圧力スパンの1%を超えない速さで連続的に変化し、かつ1分当たりの変化量が圧力スパンの5%を超えない圧力。
変動圧力 1秒当たり圧力スパンの1~10%の速さで変化する圧力。
常用圧力 圧力計を使い続けてもよい圧力範囲の上限値で、一般にブルドン管圧力計に用いる用語。
器差 同じ圧力において、検査される圧力の読みと標準器の読みとの差。
ヒステリシス差 同じ圧力における、増圧時と減圧時の読みの差。
脈動圧力 変動圧力の一種で、時間的変化が定圧力を超えて周期的に変化する圧力。
差圧 大気圧以外の任意の圧力をゼロ基準にとって表した圧力。
この意味で、ゲージ圧は大気圧との差圧と言える。

2-2 圧力計の種類と構造・原理

2-2-1 ブルドン管圧力計
  1. 原理
    断面が扁平のC形、ヘリカルの金属パイプ内にその開口固定端(接続部)より測定圧力を導入すると、圧力に応じてそのパイプの曲率が変化し、密閉自由端(管先)が変位する。この金属パイプをフランス人ブルドンが考案したことからブルドン管と呼ぶ。管先にリンクされた拡大機構(内部機構)によって指針が回転し、その位置の目盛板上の目盛が測定圧力となる。

    ブルドン管圧力計の基本構造

    ブルドン管圧力計の基本構造
  2. 構造
    管先の変位(移動)量は弾性限界内で圧力に比例する。 ブルドン管は移動量が最大目盛りで2~5mm程度である。
    ブルドン管の材質には、黄銅、アルミブラス、SUS630、SUS316、リン青銅、合金銅などの高弾性合金が使用される。 高精度用にはベリリウム銅、ニッケルスパンCなどが用いられる。
    ブルドン管圧力計の規格には JIS B7505-1があり、圧力範囲により圧力計、真空計、連成計と区別されている。

    C形ブルドン管

    C形ブルドン管

    ヘリカルブルドン管

    ヘリカルブルドン管

用途に適した機能を付加したブルドン管圧力計として、つぎのような圧力計がある。

  1. 隔膜式圧力計
    ブルドン管、接続部の材質を侵す受圧媒体の場合、受圧媒体と圧力計の間にダイアフラムを設置し、その間に封入液を入れて間接的に圧力を測定するようにした圧力計。
    ダイアフラムなどの接液部の材質は受圧媒体に侵されないものを選定する必要がある。
  2. グリセリン入圧力計
    振動、脈動がある受圧媒体を測定する場合、指針の振幅が大きく読取りが困難になるだけでなく、圧力計の寿命を短くする。 これを抑制するために圧力計内部(ケース内部)にグリセリンを充填した圧力計。
  3. 接点付圧力計
    圧力値により電気接点信号を得たい場合に用いる圧力計で、用途に応じマイクロスイッチ接点出力(制御用、警報用)や指針コンタクト接点出力(警報用)がある。 出力数として
     上限接点、または下限接点の一方を備えた1接点用
     上限接点と下限接点の両方を備えた2接点用
    を選択できる。
2-2-2 チャンバ圧力計
  1. 原理・構造
    2枚の円形の波板を貼り合わせたチャンバに測定圧力を導入すると、このチャンバが変形し(膨らんで)チャンバ中央部に取り付けられたロッドを移動させる。 
    圧力に応じてそのロッドの先端が変位し、ロッドにリンクされた拡大機構(内部機構)によって指針が回転し、その位置の目盛板上の目盛が測定圧力となる。

    通常弾性が小さいチャンバを用いて低圧(微圧)用の圧力計を構成する。

    チャンバ圧力計
2-2-3 電子式圧力計
  1. 原理
    圧力による弾性平面(ダイアフラム)の垂直方向のたわみを利用して圧力を測定することが可能であるが、一般的にたわみ量(変位)が小さいためこれを拡大して指針を動かすことは困難である。電子式圧力計は小径のダイアフラム表面に電気抵抗素子や半導体素子を形成してダイアフラムの微細なたわみによる電気抵抗や半導体素子の変化を電気信号に変換する圧力計である。
    電子式圧力計としては圧力をデジタル表示するもの、電流または電圧信号として出力するもの、閾値を設定してオン/オフ信号として出力するもの、これらを組み合わせたものなど多岐にわたる用途が可能である。
    圧力の電気信号への変換方法として大きく以下の2つがある。
    1. 半導体歪ゲージ式
      シリコンウェハ上にダイアフラムを形成し、このダイアフラムのゆがみを検出できる半導体素子を同じくダイアフラム上に形成して電気信号を得るものである。 基本的には0.1MPa程度以下の低圧力向けであり受圧媒体も腐食性のない気体に限られる場合が多いが、量産化可能なため低価格向けの圧力計に用いられる。
    2. 抵抗素子蒸着式
      金属ダイアフラム上に複数個の電気抵抗素子を形成(蒸着)し、ダイアフラムのゆがみによる電気抵抗の変化を電気回路により処理して圧力に対応した電気信号を得るものである。基本的には0.1MPa程度以上の中~高圧力向けであり、SUSなどの金属ダイアフラムを用いることにより腐食性のある気体または液体の受圧媒体も適用可能であるが、量産化には不向きな場合もあり一般的には中~高圧力向けで比較的高精度の圧力計に用いられる。

2-3 圧力計に使用される接続ねじ

接続部のねじ形状・寸法は、次による。

管用平行ねじ(G)管用平行ねじ(G)

管用テーパねじ(R)管用テーパねじ(R)

d G1/8B又はR1/8 G1/4B又はR1/4 G3/8B又はR3/8 G1/2B又はR1/2
L 10 14 18 20
外径(おねじ) 9.728 13.157 16.662 20.955
谷径(おねじ) 8.566 11.445 14.950 18.631
基準値の位置 3.97 6.01 6.35 8.16
ねじ山の数
(25.4mmにつき)
28 19 19 14

※管用平行ねじ(JIS B 0202) 管用テーパねじ(JIS B 0203)
 その他のネジサイズ、詳細寸法につきましてはJIS規格などを参照下さい。

ユニファイ細目ねじ(7/16-20UNF)
ユニファイ細目ねじ(7/16-20UNF)
外径(おねじ) 11.112
谷径(おねじ) 9.738
ねじ山の数
(25.4mmにつき)
20

※ユニファイ細目ねじ(JIS B 0208)

2-4 JIS規格で規定されたブルドン管圧力計の精度等級と最大許容誤差

精度等級と最大許容誤差
精度等級 最大許容誤差
目盛範囲A 目盛範囲B
0.6級 ±0.6% ±0.9%
1.0級 ±1.0% ±1.5%
1.6級 ±1.6% ±2.4%
2.5級 ±2.5% ±3.8%
4.0級 ±4.0% ±6.0%
目盛範囲A及びBの定義
種類 目盛範囲A 目盛範囲B
圧力計及び真空計
  • Pmin+Ps×0.1≦P≦Pmin+Ps×0.9
  • Pmin≦P<Pmin+Ps×0.1
  • Pmin+Ps×0.9<P≦Pmax
連成計
  • Pmin+Ps×0.1≦P≦-Ps×0.05
  • +Ps×0.05≦P≦Pmin+Ps×0.9
ただし、目盛範囲Bと重複する範囲は、目盛範囲Bとする。
  • Pmin≦P<Pmin+Ps×0.1
  • -Ps×0.05<P<Ps×0.05
  • Pmin+Ps×0.9<P≦Pmax

記号は、次のとおりとする。

Pmin 圧力計の場合は最小圧力
連成計の場合は真空部の最大圧力
真空計の場合は真空部の最大圧力
Pmax 圧力計の場合は最大圧力
連成計の場合は真空部の最大圧力
真空計の場合は真空部の最小圧力
Ps 圧力スパン
P 圧力計が指示する圧力

以下に目盛範囲A及びBの定義を具体的な圧力値例で図にしたものを示す。

圧力範囲(矢印付き点線)内の斜線のない領域が目盛範囲A、斜線のある領域が目盛範囲Bで指針はゲージ圧ゼロを示している。

なお、本図では目盛範囲A及びBの定義で示される精度範囲の境界部分(<、≦)は表現していない。
また、JIS規格での定義Pmax、Pminではなく、本図ではMax.とMin.を使用しております。

Max. 0.2MPa(Min. -0.1MPa)の場合

圧力計圧力計

真空計真空計

連成計連成計

目盛範囲Bは、最小圧力から圧力スパンのプラス10%未満と最大圧力から圧力スパンのマイナス10%未満及び連成計のゼロ点のプラスマイナス各5%未満の範囲。

3.関連技術情報

3-1 保護等級 IP(Ingress Protection)について

IPとは、固形異物、水に対する電気機器、キャビネットの保護等級を記号であらわしたもので、圧力計に対する規定ではありません。
弊社ではIPXX 相当としています。製品の保護等級につきましては取扱説明書をご確認下さい。

IP 1 2

1 :第1記号(固形異物に対する保護等級) 
2 :第2記号(水の侵入に対する保護等級)

第1記号 保護の程度
0 保護なし
1 直径50mm以上の大きさの固形物の侵入があってはならない
2 直径12.5mm以上の大きさの固形物の侵入があってはならない
3 直径2.5mm以上の大きさの固形物の侵入があってはならない
4 直径1.0mm以上の大きさの固形物の侵入があってはならない
5 動作及び安全性を阻害する量の塵埃の侵入があってはならない
6 塵埃の侵入があってはならない
- -
- -
第2記号 保護の程度
0 保護なし
1 鉛直に落下する水滴によって有害な影響を及ぼしてはならない
2 鉛直に対して両側に15度以内で傾斜したとき,鉛直に落下する水滴によって有害な影響を及ぼしてはならない
3 鉛直から両側に60度までの角度で噴霧した水によって有害な影響を及ぼしてはならない
4 あらゆる方向からの水の飛まつよって有害な影響を及ぼしてはならない
5 あらゆる方向からのノズルによる噴流水によって有害な影響を及ぼしてはならない
6 あらゆる方向からのノズルによる強力なジェット噴流水によって有害な影響を及ぼしてはならない
7 水面下0.15~1m、30分沈めた時、有害な影響を生じる量の水の浸入があってはならない
8 7より厳しい条件下で継続的に水中に沈めた時,有害な影響を生じる量の水の浸入があってはならない(保護関係者間で取り決める)

IPはJIS C0920に基づいて規定された保護等級表示です。